起業後、失敗する人の特徴とは?成功事例と失敗事例をもとに解説
昨今、会社の設立件数は年々増えている傾向がありますが、それらの会社全てが存続している訳ではありません。
では、どうすれば設立後、会社は継続できるのでしょうか?
この記事では
- 会社を10年存続できる割合
- 会社をすぐに潰してしまう人の特徴
- 会社を長期的に継続・発展できる人の特徴
を会社設立を支援してきた税理士の経験を元にお伝えしていきます。
会社設立10年後には約3割が失敗、20年後には約半数の企業が失敗している
起業後間もなくして会社が倒産してしまう理由は、
- 放漫経営
- 販売不振
- 経験不足等
があります。
日本の行政機関である中小企業庁が発行している中小企業白書(2011年版)では、
1980~2009年に創設され た企業の創設後経過年数ごとの生存率の平均値を 示したものであるが、10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が撤退しており、新規企 業は、絶えず市場に参入するが、創設後の淘汰も また厳しいことがうかがわれる。
中小企業白書(2011年版)全文 P187
と記されています。
どの会社も手元にキャッシュがなくなれば倒産します。
10年で約3割、20年で約半数が潰れてしまう中で、会社を存続していくためにはどうしていけばいいのでしょうか?会社を存続できない人には、どのような特徴があるのでしょうか?
それぞれにお答えしていきます。
会社設立に失敗する人に共通する3つの特徴
ここでは「会社を存続できなかった人を失敗した人」と仮定して、その場合の特徴と対策を見ていきます。
失敗する人の特徴は以下3つです。
- 社長がお金にルーズ
- 当初作成した創業計画の内容が不十分だった
- 未経験の業界でいきなり法人化した
順番に説明していきます。
特徴1:社長がお金にルーズ
社長が個人的な費用を会社の経費で落とすといった、公私混同が原因のパターンです。
具体的には以下のような例があります。
- 業務に関係の無い趣味にかかるお金を経費で落とす
- 取引先ではない人との食事代を経費で落とす
- 社長がプライベートで使用する車を経費で購入する 等
これらを設立当初から続けていると、せっかく生まれた利益が安定しなかったり、従業員や取引先からの信頼も失ったりししてしまう恐れがあります。
また、このように公私をきちんと分けられていない人ほど、いつ・何に・いくら使用したか分からなくなり、証拠となる領収書を残していないケースがあります。
仮に経営が順調だとしても、プライベートなところでお金を使ってしまうでしょう。
それでは、私が税理士として携わった経営者の失敗を実際の事例をもとにお伝えします。
社長Aさんの事例(飲食事業)
ある社長Aさんは、自身が使用する車(高級車)や、友人(取引関係がない)との飲食代を全て経費として落としていました。会社の利益を、個人的な趣味や遊びの費用として使ったため、内訳を本人は把握できていませんでした。その結果、経営は傾き廃業となってしまいました。
社長のお金管理に不安がある場合の対策方法
自社の社員に堂々と使用用途を見せられるもの=仕事で使用するものは経費で処理し、公私混同しないようにすることです。
公私混同すると、正しく管理をしないまま無駄なお金を使ってしまいます。
そうなると理由がわからないまま気が付くと資金がなくなっていたということも多いようです。公私混同せずに、使用用途をきちんと分けて、領収書管理する癖をつけましょう。
特徴2:当初作成した創業計画の内容が不十分だった
会社を設立する際は、創業計画を立てる方がほとんどです。
しかし全てが思い通りにいくとは限りません。計画していた通りに売上がたたなかったり、予想以上に固定費がかかってしまったり、初めて会社経営する場合、予測できないことが起こります。
経験がない中でも基本的な知識やノウハウを身につける、プロの視線で現実的かどうかを判断してもらうことを会社設立前に怠らないことです。
社長Bさんの事例(飲食事業)
社長Bさんは、創業計画をたてて飲食業で起業しました。しかし、経営の経験もなければ業界経験者といえるほど経験はなかったため、あらゆる数値は感覚で見積もっていました。
実際開業してみると、予想以上に固定費(店舗改装するための初期費用や家賃)がかかってしまいました。またお客様の客足が伸びなかったことから1年半で廃業となりました。
社長の創業計画が不十分な場合の対策方法
同業の経営者の知り合いを見つけて話を聞くなどして、実際の経営についてイメージしましょう。経験を聞くことで、自分の場合ならどうか?と考えれるでしょう。
創業計画に関しては、プロにフィードバックをもらうこともできるでしょう。会社設立をサポートしてくれる士業(税理士・司法書士・行政書士・会計・社労士)へ相談してみることもできます。
また経営に関する知識を増やしましょう。本を読んだりすることでも知識は身につけることができます。
特徴3:未経験の業界でいきなり法人化した
初めて事業にチャレンジする場合、個人で小さく始めて商売の感覚を掴んでいくことが良いとされます。
個人で同業の事業をして上手くいった人は、だいたいの商売の感覚が掴めていることが多いので、計画を立てる際にも自分の経験から数字を見込めます。
しかし未経験・初めての業種となると全ての見込みから大きくズレてしまうことが多く、独立後に事業を軌道に乗せることは難しいでしょう。
社長Cさんの事例(飲食事業)
社長Cさんは、未経験で飲食事業を起業しました。
しかし、下積み期間がないまま自分の店を持つという起業への憧れだけで起業してしまったため、事業を継続できませんでした。
社長が未経験の業界で会社設立を場合の対策方法
②の対策方法と重複しますが、実際の経営についてイメージを持つことや、ノウハウを身に付けることに加えて、仕事をすでにいくつか受注できていること、今後仕事をもらえそうな人を見つけましょう。あなたに人脈があり信頼されているのなら、人間性で仕事を依頼されることもあるでしょう。
失敗事例のまとめ
失敗例はこれらの事例の他にも探せばたくさんあるでしょう。
会社を経営していくには多くのことを同時に進める力や、計画外のことが起こった時に判断する力が必要だと言えますね。では事業に失敗した場合、経営者はどうなってしまうのでしょうか。
会社で融資を受けなら、担保なし連帯保証人なしの「新創業融資制度」を活用
お金の使いすぎや借金の抱えすぎ等が前項の例にあがっていますが、起業した場合借りたお金は自分ですべて返済する必要があるのでしょうか?個人と法人で異なるので、注意が必要です。
・個人の場合
個人事業の場合、事業主本人が事業資金を借りるため、もし借金を返せなくなったら事業主本人の財産から返してゆかなければなりません。
・会社の場合
経営者と別人格のため、会社の債務=代表者の債務にはなりません。
会社の場合で社長が返済責任を負うケースは以下です。
- 会社や第三者への損害賠償責任が生じる場合
- 法人(会社)の保証人になっている場合
- 会社に借金をしている場合
日本政策金融公庫では連帯保証人なし担保なしの「新創業融資制度」という創業融資がありますので、会社設立時には、こちらを活用してリスク回避することをお勧めいたします。
会社設立後、失敗せず会社を長く存続させられる人に共通する4つの特徴
では長く会社を続けていくためにはどうすればいいのでしょうか?ここでは会社を存続できる人の特徴を見ていきましょう。
特徴1:熱意と計画性を兼ね備えている
熱心でやる気がある人というのは以下のような人のことです。
- 事業計画がある
- 資金が用意できている(借りるあてがある)
- 経験がある(仕事の受注先のあてがある)
小さくビジネスをして、経験と人脈ありきで会社設立される方は軌道に乗りやすく、すぐに会社が潰れにくい傾向があります。
社長Dさんの事例(介護事業)
社長Dさんは、もともと金融業界でサラリーマンとして働いていました。自分で介護事業を立ち上げたいと思い、介護施設に就職し2年間働きました。経験を積んだ後、税理士事務所に依頼して融資を受けることにも成功しました。
サラリーマン時代に培われた知識を武器にして、今は少しずつ事業拡大されています。
特徴2:資金を公私混同しない
失敗の事例でもあげましたが、長く会社を続けられる人は、お金を個人・法人できっちり管理できます。用途が明確なものへの経費の使用は社員も信頼できます。
公私混同と経費の使い道の判断は、少し内容が異なります。例えば固定費を削る、交際費を削る等は業種によっては経営にマイナスに働くこともあり、一概に良し悪しを決められません。
何か物を買って経営が上手くいくなら誰もがそうしますし、投資先やタイミングは経営者の判断だと言えるでしょう。
特徴3:経営者の考えに共感した人材を確保している
能力の高い人材を採用することが、必ずしもビジネスを成功する上で最善とは限りません。
能力も必要ですが、一緒に働く人間が経営者の考え方を理解し、一致していることが最も大切だと言えます。
社長Eさんの事例(介護事業)
社長Eさんは、採用時、優秀な人材を雇うわけではなく、自分と事業に対する考え方が近いかどうかで採用しています。自分の理念に共感してくれる人、一緒に働きたいと思ってくれる人だと、仮にトラブルが起きた時にも、前向きに話を進めていくことができます。
優秀な人でも、社長と考え方が異れば入社したとしても長続きしません。同じ志を持っていることは一緒に働く上では重要なことです。
特徴4:売上をあげる方法を知っている
どこに営業にいけば仕事を受注できるのかを分かっている、また仕事を紹介してもらえる人脈があることは重要です。もともと会社勤めをされていて法人化する場合は、取引先と関係が続いて仕事が入ってくるかもしれません。
また、例えば「あなたが事業を始めるなら、ぜひ仕事を依頼するよ!君は仕事が出来るし任せたい!」と言っていただけるような信頼関係がある人がいるならば、売上がたつ見込みもあると言えるでしょう。
何のあてもない状態から事業を始めたとしても、売上が立たなければ会社経営は上手くいきません。
社長Fさんの事例(IT事業)
社長Fさんは、WEB業界未経験者でした。しかし「起業するなら協力するよ」と出資してくれる知人がいました。また社員として一緒に立ち上げた知人が業界のノウハウを持っている人だったので、立ち上げた時から案件を受注できました。
会社設立後、失敗してしまう人とは?まとめ
以上、起業後、会社を存続するための成功事例と失敗事例を紹介しました。
大きく派手に始めるのではなく、何事ともまずは小さく商売を始めてみて、成功体験を積み重ねることが大切だといえます。人脈や知識、ノウハウの全てを培って、会社は存続できるものだといえるでしょう。
過去起業した方々の成功・失敗経験談を元に会社設立・経営にチャレンジしてみましょう。
この記事を監修した人
公認会計士・税理士/クロスト税理士法人
松本昌晴
この記事を監修した人
公認会計士・税理士/クロスト税理士法人 松本昌晴
会計事務所を開業してから35年以上になります。この間、500件以上の会社設立の無料相談にかかわりました。会社設立について悩んでいる人達に、「悩みを解決するための情報を提供したい」という想いから本サイトを立ち上げました。